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企画・構成:山田和寛(nipponia)× アイデア編集部
デザイン:山田和寛(nipponia),ラディム・ペスコ,LABORATORIES(加藤賢策,岸田紘之)
協力:きむみんよん,Akira1975,劉慶
グラフィクデザインがツールさえあれば誰にでも実践できる表現活動になったのと同様に,それまでごく限られた職能であった書体デザイナーの仕事も,2000年代以降はデジタル環境下での制作ツールの普及により門戸のひらかれたものとなった。フォントデータを公開・販売するためのさまざまなプラットフォームやコミュニティが整備されたことも,書体や書体デザインをより身近に感じるきっかけとなっただろう。
特集を通じて紹介するのは,10組のデザイナー/ファウンドリーたちだ。活動拠点は欧州,中東,アジアとさまざまだが,フリーランスの書体デザイナーとして活動する人や,自身のファウンドリーを立ち上げた人,デザイン制作のなかで個人で書体デザインにも取り組む人など,いずれも大手ベンダーによる書体制作とは異なる現場で実践を続けている。そのなかから,前半ではラテンアルファベット圏以外のデザイナー/ファウンドリーを中心に取り上げ,各国での書体デザインとその普及,使用をめぐる状況を,虫の目から捉え直すことを試みた。また,後半では,2020年で自身のファウンドリーの10周年を迎えた書体デザイナー,ラディム・ペスコの仕事を振り返り,従来の書体デザインの枠にとらわれず,さまざまな協働のなかでオルタナティヴな活動を続ける書体デザイナーの実践を紹介していく。
本章では,欧州,中東,アジアなどを拠点とする10組のタイプデザイナー/ファウンドリーに4ページの書体見本帳の制作を依頼した。特に,近年のラテンアルファベット圏以外の地域でのタイプデザインの状況を知るために,漢字,ハングル,タイ文字,アラビア文字,アルメニア文字などの制作に取り組む人たちや,非英語圏でのラテンアルファベットの制作に携わる人たちを紹介していく。自身のファウンドリーを立ち上げた人,デザイン制作のなかで個人でタイプデザインにも取り組む人など,インディペンデントな活動を続ける彼/彼女らにとってのそれぞれのタイプデザインについて,メールインタビューを通じて答えてもらった。
Hypertype /ミンジュ・ハム
山田和寛/nipponia
Detail Type Foundry /神村誠+神村さち
Thai Letterforms /シリン・グンクロイ
Trilingua Design /アドニアン・チャン
Naïma Ben Ayed Bureau /ナイマ・ベン・エイド
Briefcase Type Foundry /トマス・ブルーシル,ペトラ・ドチェカローバ,ラデック・シドゥン
justfont
debakir /カジャン・アペリアン
インタビュー:トラヴィス・ケッヘル,リジー・ゲルシェンゾーン(Future Fonts)
座談会:わたしたちとタイプデザイン つくる人・つかう人の現場から
登壇:神村誠,野口尚子,有馬トモユキ,山田和寛
構成:長田年伸
2010年に自身のタイプファウンドリー,RP Digital Type Foundryを設立して以降,ラディム・ペスコの活動は,アムステルダム市立美術館のビジュアルアイデンティティ用書体の制作をはじめ,多くの美術館関連のプロジェクトや,アパレルブランド,雑誌のための書体制作,展覧会のキュレーションや教育活動など多岐にわたり,さまざまな協働のなかで,コンセプチュアルかつ自由な形式のタイプデザインを生み出している。 特集後半となる本章では,タイプデザイナーという職能を現在のグラフィックデザインとの関連のなかに捉えていくため,従来のタイプデザインの枠にとらわれない活動を続けるラディムの10年間の実践を,ともにプロジェクトに取り組んできたコラボレーターたちの言葉を交えて紹介していく。
文字の進化
文:スチュアート・ベルトロッティ・ベイリー
一体何が違うのか。何が魅力的なのか。
文:リンダ・ヴァン・ドゥールセン
エマージェンス・タイプフェイス
文:アニエスカ・クラント
【綴じ込み冊子】エマージェンス・タイプフェイス
デザイン:ラディム・ペスコ
デジタル時代の欧文書体デザインと近況
文:大曲都市
アメリカでのポン・ジュノ『パラサイト』 (2019)のアカデミー賞受賞やBTSのビルボード「HOT100」1位獲得をはじめ, 日本でも,ベストセラーとなった『82年生まれ,キム・ジヨン』(筑摩書房,2018)などのいわゆるK文学やコロナ禍における韓流ドラマの流行など,韓国のカルチャー が世界を席巻している。新連載「MIRRORS」は, そのような韓国の文化が生まれる状況をグラフィックデザインを通じて俯瞰する試みだ。いわゆる“K” カルチャーの隆盛については,もちろんグラフィックデザインも例外ではない。ガラパゴス化した日本のそれとは異なり,中堅~若手デザイナーを中心に世界と接続した精力的な活動が見られる。本稿は新連載への導入として,2000~2010年代の韓国グラフィックデザインシーンを牽引してきた,Sulki & Minのインタビューを掲載する。
構成・文:後藤哲也
デザイン:Sulki & Min
翻訳:後藤哲也
英文校正:ブラザトン・ダンカン
写真:キム・キョンテ
クラフトビールの世界には100 以上のスタイルがある。本稿では,関西最大のクラフトビールイベント「CRAFT BEER LIVE」のデザインを担当している筆者が,イベントに参加する4つの醸造所へのインタビューを通して,ビールの名前やボトルラベル,ポスターグラフィックスに見られる創造性を紹介していく。日本らしい名前と洗練されたデザインを併せ持つ醸造所やタイポグラフィのポスターをバーの壁に貼り,ラインナッ プを見せるもの,漫画のようなイラストで空想のストーリーを作り上げる醸造所など,ビールのビジュアルはクリエイティブに溢れていた。
文:ブラザトン・ダンカン
デザイン:久保元気(butter)
翻訳:俣野麻子
古代より受け継がれる中国の漢字文化。人々のコミュニケーションと伝統文化を 継承するために誕生した漢字は,長い歳月のなかでさまざまな文化を支える社会 インフラとして普及し,同時に文字の形象そのものを楽しむ人々の美的感覚を育 ててきた。そんな中国の漢字文化を日本語の漢字と仮名フォントに取り入れ,こ れまでにない多彩なフォントの創作に挑戦するのが楽フォントだ。 本稿は,2020年に設立した同社の取り組みを紹介する連続企画。第一弾では, 製品ラインナップの紹介とともに,同社の成り立ちとフォントの制作背景につい て,代表の王博文,デザイナーの丁一らスタッフに話を聞いた。
楽フォントの書体づくり
インタビュー:王博文,丁一,戸村えり菜,大藤篤人
聞き手:アイデア編集部
構成:藤生新
タイポマニア・モスクワ・インターナショナル・フェスティバル(TYPOMANIA)は,タイポグラフィやレタリング,モーションデザインなど,多国籍で様々なジャンルのデザイナーらが集い,展示とレクチャー公演が催される教育的なプロジェクトだ。 2019年度はモスクワ博物館を会場に,5月末から6 月中旬ま で行われ,日本からは小林一毅が参加した。本稿では,イベントの主宰者へのインタビュ ーと小林によるレポートを通して,プロジェクトの紹介とロシアのデザイン状況,フェスティバルに参加した各国のデザイナー の作品について説明する。
翻訳:山本真実
写真:エカテリーナ・ウリュトワ,ソフィ・ルビーナ
[インタビュー] アレクサンドル・ヴァシン& ナタリア・ヴェルチンスカヤ
イベントに参加して
文:小林一毅
「イラストレーションがあれば,」展レポート
文:塚田優
「Form SWISS」展レポート
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新刊紹介
別冊付録:ニューカレンダー
付録となって3年目を迎える「ニューカレンダー 」は、八紘美術とのコラボレーション版。発色の良い特色インキを高精細にかけ合わせることにより, 季節の寒暖差を色彩のグラデー ションで感じられるデザインに。
D:牧寿次郎