キーワード
企画・構成:山縣良和+writtenafterwards,磯山進伍,須山悠里,アイデア編集部
デザイン:須山悠里
撮影:田附勝
撮影協力:池田宏
制作協力:奥田桃子,今田早紀,伊豆尚晃,佐藤啓太,飯島みちる,土田詩織
協力:中西多香・中西大輔(亜洲中西屋),荒巻賞午,出村雅俊,宇野良子,ちちぶ銘仙館
協賛:株式会社糸編
ファッションデザイナーの多くは,ひとつのコレクションを制作していく上で膨大なリサーチを行い,そこで得た断片的な思考を「ムードボード」という平面空間のなかに整理していく。本特集では,そうしたファッションデザイナーたちの創作のプロセスを可視化するために,ファッションブランド「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」のデザイナー・山縣良和による創造の過程と山縣の個人史にまつわる物や記憶を,社会的な事象とも結び合わせながら紹介していく。
神話から始まり,古代,中世,近世,近代を経て,現代まで至る誌面を眺めていくと,なかには狭義のファッション観では捉えられないものも出てくるかもしれない。しかし,東西の文化を横断し,山縣の創作を通してファッションの歴史を綴った本特集からは,人類と併走してきた装いの変遷と,その生態系を感じることができるはずだ。そして,その変遷を辿ることにより,ファッションデザインとグラフィックデザインの思考の上での共通点・相違点を探っていき,両者のあらたな可能性を検証する。
本特集を制作している最中に,世界規模で発生したコロナパンデミックによって,私たちは経済活動や日常生活の根本的な見直しを迫られた。移動や対人の自由が奪われたことで,人々の装いのあり方にも変化がみられるいま,人類の壮大な歴史と営みのなかでファッションや装いを考察しようとする山縣の試みを通じて,広くは私たちにとっての文化や表現活動のかけがえのなさに気づくことができるのではないだろうか。
山縣良和(やまがた・よしかず)
1980年鳥取県生まれ。2005年セントラル・セント・マーチンズ大学を卒業。在学中にジョン・ガリアーノのデザインアシスタントを務める。2007年にwrittenafterwardsを設立。2008年より東京コレクションに参加。2014年に毎日ファッション大賞特別賞を受賞。
2015年には日本人として初めて「LVMH Prize」のセミファイナリストにも選出された。またファッション表現の研究,学びの場として,2008年より「ここのがっこう」を主宰。「GAKU」のディレクター。
writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)
2007年,山縣良和と玉井健太郎(2009年に辞任)によって立ち上げられた。コンセプトは,装うことの愛おしさを伝え,流行の成り立ちや本質を伝えること。創造性をもって“いま”を表現していくこと。そして心に届けることを。
何を着てきたか──「衣」のフォークロア
文:畑中章宏
日本女性ファッション誌小史
文:ばるぼら
21世紀の消費社会とファッションとフォークロア
文:速水健朗
ファッションって何だろう──40年の歩みからみた服の価値
文:栗野宏文
Purpleと90年代以降のファッションシーン 鈴木親の仕事
[インタビュー]鈴木親
2020 年ファッションの進化と役割
文:西尾マリア
ファッションのエッセンスの探求,デザインと視覚言語の可能性の検証
文:リンダ・ロッパ
コロナパンデミック以降の社会とファッション
文:リドヴィッジ・エデル コート
身体とファッション
文:伊藤亜紗
崩壊から生まれる新しい人間たち
文:小石祐介
変奏される神話──山縣良和とアート/ファッションの想像力
文:石倉敏明
Afterword
文:山縣良和
寄稿者プロフィール
これからのデザイナーたちへ
10代の学びを考える
[対談]養老孟司×山縣良和
企画・編集:斧澤未知子,ゲオルク・ルティスハウザー
執筆:斧澤未知子
写真:伊丹豪
デザイン:タヌキ
2019年の10月から11月にかけての2週間,日本の2つのパブリッシャー(editionnordとRondade)から成る「Contemporary (Art Book) review/archive (以下,C(AB)r/a)」がスイスでツアーを行った。このツアーはスイスのアートブックデザイナー/パブリッシャー・コレクティブの「フェア・イナフ(Fair Enough)」とC(AB)r/aが連携したもので,アジアのコンテンポラリー・アートブックのアーカイブをスイス各地で展示・販売する活動だ。本稿では,2週間のツアーを主宰のひとりである斧澤未知子により日記形式で紹介。彼らがなぜツアーに踏み出すことになったのか,世界のアートブックの流通・販売をめぐる状況への考察をふまえレポートする。
文:後藤哲也
デザイン:グレゴリー・アンボス
翻訳:ダンカン・ブラザトン
写真:植松琢麿
兵庫県尼崎市にあるアートスペース「A-Lab」で,今年2月下旬から3月末までヴィジュアルアイデンティティ(VI)をテーマにした展覧会「アイデンティティのキキ」が開催された。本展の開催は,キュレーションを担当したデザイナーの後藤哲也のVIコンペへの参加経験がきっかけとなっており,「アイデンティティの現在地」と「コンペという手法」に焦点をあてるため,架空のVIコンペのために国内外で活躍するデザイナー三組を招集し,プロセスから完成案までを展示するものであった。本稿は,アイデンティティの「機器」,「嬉々」,「記紀」,そして「危機」について思考した同展を誌上に再現する試み。
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,岸田紘之)
写真:高野ユリカ
[インタビュー]原田祐馬
UMA / designfarm 原田祐馬が育むデザイン農場
[対談]後藤哲也×室賀清徳
2007年の設立以降,大阪を拠点にグラフィックに限定されない領域横断的なデザイン活動を続けてきたデザインスタジオ,UMA / design farm(以下,UMA)の展覧会がクリエイションギャラリーG8で開催された。会場では幅広いジャンルの成果物やそのプロセスが空間的なナラティブに再構成されることで,その背景にあるクライアントや関係者との協働作業の濃密さが可視化された。本稿では,折しも広まりつつあった新型コロナウイルスの感染拡大防止対策により,多くの制約下での開催となった同展を,UMA代表の原田祐馬とともに振り返っていく。さらに後半では,原田と親交の深いデザイナー・後藤哲也と編集者・室賀清徳が対談形式で同展をレポートする。
第22回亀倉雄策賞,JAGDA新人賞2020,JAGDA賞2020受賞者決定
新刊紹介
390号に下記の間違いがありました。お詫びして訂正いたします。
——
p. 207 第22回亀倉雄策賞 受賞者紹介
菊地敦己氏略歴の末尾
誤)TDC賞
正)ADC賞