IDEA magazine389
2020/4
フェミニスト・モーメント ジェンダーから考えるグラフィックデザインの可能性

IDEA No.389
Published: 2020/4
Price: 定価3,111円/2,829+tax jp yen
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フェミニスト・モーメント
ジェンダーから考えるグラフィックデザインの可能性

企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,岸田紘之)

ハリウッド発のMeToo運動も記憶に新しい今,身の回りのジェンダーバイアスに目を向ける機会が増えている。2016年に韓国で発売され大ヒットしたフェミニズム小説『82年生まれ,キム・ジヨン』は,日本でも翻訳版が異例の売り上げを記録。韓国のフェミニズム文学を入り口に,ジェンダー問題を意識するようになった日本人も少なくないだろう。時を同じくして,国内では医学部入試における女性差別問題が大きな波紋を呼び,2019年のあいちトリエンナーレでは参加作家の男女比を半々にする「ジェンダー平等」が掲げられた。現代を生きる人々の多くが,性別を問わずフェミニズムやジェンダー問題を身近に意識する,あるいは当事者として直面する「フェミニスト・モーメント」を経験している。
 そうしたジェンダー不平等を抱える社会に対し,わたしたちはデザインを通じてどんな問いかけをしてくことが出来るのか。本特集では,韓国で行われた女性デザイナーによる意欲的なプロジェクト・展示企画の紹介を起点に,日本,アメリカ,ヨーロッパの新旧女性デザイナーたちによる実践を紹介していく。
 しかし,本特集に登場する女性デザイナーたちは必ずしもフェミニストであるわけではなく,全員が意識的にジェンダーの問題と対峙しているわけではない。当然ながらジェンダーにより特定の形やデザインスタイルが規定されることはなく,本特集もまた,ジェンダーとスタイルを結び付けるようなことは意図していない。つまるところ,これからのグラフィックデザインの可能性を考えるうえで,女性や男性といった括りを設けることは,それ自体意味をもたない行為であり,デザインの作り手も受け手も,括弧付きのスタイルや,括弧付きの何かに縛られる必要はないのだろう。本特集では,企画そのものにあえてジェンダーバイアスを設定することで,そんな当たり前に立ち戻ってみることにした。そのうえで,今わたしたちは社会に対してどんな問いを立てていけるのか,デザインの真価が問われている。

韓国─日本 ジェンダーと女性デザイナーたち

The W Show: A List of Graphic Designers

The W Show: A List of Graphic Designers
文:ナ・キム,チェ・リー,チョイ・スルキ

牡丹とカニ:シム・ウユン個展
インタビュー:ヤン・チウン

ソウルの女性デザイナーたち
文:シン・インア

ヤン・ミニョン

ウ・ユニ

イ・アリ

フェミニストデザイナーのワーキングライフを変える
フェミニストデザイナー・ソーシャルクラブの活動 インタビュー:シン・インア

韓国とフェミニズムについて フェミニズム・リブートから現在まで
文:木下美絵

「女性だから」からの解放 平林奈緒美の仕事
デザイン:平林奈緒美
インタビュー:平林奈緒美
聞き手:渡部千春,アイデア編集部 構成:渡部千春

LGBTという言葉が必要無い社会を目指して SHIBAURA HOUSE「nl/minato」の取り組み
インタビュー:元行まみ,中島潤
聞き手:アイデア編集部 構成:長田年伸

先駆者たちのアメリカ

ふたりの女性デザイナー シェイラ・レブラント・デ・ブレットビルとロレイン・ワイルド
文:イエン・ライナム

[トークイベント]デザイナーを続けるための10の秘訣
ギンザ・グラフィック・ギャラリー第371回 企画展「ポーラ・シェア:Serious Play」
登壇:ポーラ・シェア

女性たちのモダニズム

タイポグラフィと女性たち
文:宮後優子

女性たちとバウハウス 山脇道子の見たワイマール文化とユートピアの学校
文:髙木毬子

マリー・ノイラートの国際絵ことばと科学絵本
文:本庄美千代


グローバル・スタイル ポストモダンを経た後のモダニスト・タイポグラフィ

文:ミスター・キィーディー,イエン・ライナム
デザイン:村尾雄太
翻訳:久家衆生,大久保エマ

【序文】グローバル・スタイルを理解する
文:イエン・ライナム

グローバル・スタイル ポストモダンを経た後のモダニスト・タイポグラフィ
文:ミスター・キィーディー

【解題】多数のモダニズム
文:イエン・ライナム

本稿「グローバル・スタイル(The Global Style)」は,ロサンゼルスを拠点とするグラフィックデザイナー,ミスター・キーディーによって2013年に執筆された。ポストモダニズムを経由し,世界中に拡散された表層的なスタイルとしてのモダニズムを「グローバル・スタイル」とし,歴史的文脈や本質を欠いて引用されるスタイルと,そうした状況を生み出す経済社会への啓蒙的エッセイだ。キーディーの鋭い分析の中には,現在の日本のデザインや,デザイナーの在り様にも当てはまるところがあるのではないだろうか。キーディーと親交のあるデザイナー,イエン・ライナムによる解題と併せて紹介する。


連載|FormSWISS 第4回
企画・構成: Form
クリエイティブディレクション:&Form
デザイン:丸山新,高橋圭太郎,加藤雄一
写真・文:丸山新
翻訳:岩坂未佳,藤本和子 – ヘッジズ,齋藤高晴, 坂爪奈央子
タイプフェイス:Swiss Typefaces
印刷(pp. 131-132):大洋印刷株式会社
協力:在日スイス大使館, Zürich Tourism, Swiss Typefaces,大洋印刷株式会社

世界各国におけるデザインの状況はもとより,その周辺を取り巻く教育,テクノロジー,ワークライフバランスなどを現地でリサーチし,本誌での4回にわたる連載を皮切りに,誌面の枠を越えて展示や教育プログラムなどを展開していくデザインプラットフォーム「Form」。最終回となる今号では,チューリッヒを中心としたスイス北部のスイス・ドイツ語圏に拠点を構えるクリエーターや教育機関を取り上げる。
 独自の視点からコンセプトを導き,それを大胆なヴィジュアルへと昇華させるデザイナー。これからのスイスのヴィジュアルコミュニケーションデザインを牽引していくだろう2人組。学生たちのプロジェクトが第一線で活躍する世界中のデザイナーたちから注目を集めるデザイン大学など。FormSWISS最終回となる今号では,現在進行形で進むハイレベルなクリエイティヴと,新世代の台頭へと迫る。

Ludovic Balland

Kasper-Florio

Julia Hasting

Hubertus Design

Zurich University of the Arts

C2F

Studio Feixen


YELLOW OBJECTS 黄色い物体 社会的不正義に対して団結し,自由を求めて戦うポスター
文・イメージ:YELLOW OBJECTS(黄色い物体)

逃亡犯条例改正案に端を発した香港のデモ活動は,香港の返還以降,最大規模のものとなっている。この一連の動きの中で香港のグラフィックデザイナーたちは,ポスターによる結集の呼びかけを意図した展覧会を開催した。テーマは「YELLOW OBJECTS」。これは政府による,デモ参加者をモノ扱いした残虐な発言に触発されている。18名のグラフィックデザイナーそれぞれが,同テーマの下に作成したポスター群は簡潔で力強いものであった。本稿では,参加したデザイナーの1組よる寄稿を通して,騒動の渦中にあるデザイナーたちの取り組みを紹介する。


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