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文字,紙,本を素材やテーマに作品を制作しているアーティストであり,グラフィックデザイナーとしても国内外で高く評価されている立花文穂の初めての作品集。本書にはアートワークのみならず,葉がきからポスターまでの多種多様な印刷物,本,写真,文章などを多数収録する。アートとデザインの狭間を行き交いながら生み出される立花の作品群は,一葉一葉の紙に印刷し,それらを束ねる本のようなもの。本書は1995年の初個展「MADE IN U.S.A.」から20年間の創作活動を,実際の本にして可視化する試み。道端で紙屑を拾い集める行為に始まり,インスタレーションや活版印刷,写真,編集など,さまざまな手法によってつくりあげてきた独自の世界を,ひとつの塊として表現する。
私たちは21世紀のネットワーク化とデジタル化のなかで,人類が30万年かけて貯蓄してきた全情報量を越える情報がほんの数年で生成される情報爆発の時代に生きている。そして,「過去」と「現在」が非時間的に同存する環境のなかで,記号的に情報を消費している。
この「観察」の視点から立花の制作活動を見つめ直すとそれは先史時代に人類が洞窟に残した図のように,現代の情報空間のなかで,人間の有限性のもとに穿たれた図示表現として立ち現れてくる。
立花の活動は,西洋美術由来の批評言説やデザイン論ではない,人類史的な視点をともなった制作の言葉を生成する大きな手がかりとして捉えられていくだろう。(室賀清徳・アイデア編集長)
立花文穂(たちばな・ふみお)
アーティスト/グラフィックデザイナー。1968年広島生まれ。文字,紙,本を主な素材やテーマに作品を制作し,国内外で発表。東京TDC賞やブルノ国際グラフィックデザインビエンナーレグランプリを受賞するなど,グラフィックデザインの分野でも評価が高い。2007年より自ら責任編集とデザインを手がける不定期刊行物『球体』をはじめ,現在6号まで刊行している。個展に「デザイン 立花文穂」展(ギンザ・グラフィック・ギャラリー,2011年)など,グループ展にMOTアニュアル2008「解きほぐすとき」展(東京都現代美術館,2008年),「風穴」展(国立国際美術館,2011年)などがある。アーティストブックに『クララ洋裁研究所』『木のなかに森がみえる』『風下』など,著書に『かたちのみかた』(誠文堂新光社)がある。現在,女子美術大学教授。
タイトル:Leaves 立花文穂作品集
サイズ:B5変型(240×200ミリ)
ページ数:320ページ(オールカラー)
製本:並製本/糸かがり
定価:3,500円(税込3,780円)
刊行:2016年5月11日