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[特集]
いま,デザインの現場では
世界のブランディングデザインの思考と実践
企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,守谷めぐみ)
協力:サキ・ホ,きむみんよん
社会が成熟し,機能や品質,造形的な美しさだけでは市場に溢れる商品やサービスの差別化が難しくなっている現代において,“コト”をどのようにデザインするかというデザイナーの職能はますます求められている。そうしたデザインの実践の場のひとつが,本特集で取り上げるブランディングデザインという領域だが,従来のような優れたコーポレートアイデンティティや商品パッケージをデザインするだけでは現代のブランディングデザインは成立しない。より良い社会や環境への配慮があり,透明性と持続可能性のある商品サービスであるか,やりがいや豊かさを生むビジネスであるかなど,企業理念や組織運営と一貫した思想のもとにモノやコトがデザインされていることが成功事例として必要な条件だろう。
このように複雑化するブランディングデザインの領域において,グラフィックデザイナーたちが培ってきた思考のプロセスや具現化の方法を整理し,デザイナー以外の人にも応用できるアプローチとしてまとめられたのが,2010年前後を境に世界的なトレンドとして注目されている「デザイン思考(Designthinking)」だ。具体的には,デザイナーたちがクライアントや消費者のニーズを経済的・技術的な制約があるなかで実現しようとする際の行動指針であり,機能性だけでなく感情的な価値にも重きを置く人間中心のアプローチだといえる。人対人のコミュニケーションを通じて考えを共有・共感しあい,そこからニーズや問題を突き止め,アイデアを具現化する。さらに,トライアル・アンド・エラーを繰り返し,コンセプトを改良していくという,プロセス重視型の提言だ。
アメリカで提唱されたこの考え方は,日本でもビジネスを変える革新的なアイデアとして関連書籍が多数刊行されるなど大きな反響を呼んでいるが,“誰でも取り入れられる”という点がひとり歩きし,インスタントなビジネス論として誤った受け入れられ方をしているところもあるだろう。「デザイン=課題解決」といった広義のデザインの浸透により,デザインさえあればどんな問題でも解決できるという,まるで“デザイン”が魔法の言葉であるかのような誤解を招いているように思う。
そこで,本特集では,日本,アジア,オセアニア,中東,欧米の7つのデザインスタジオを取り上げ,クライアントの希望を叶えることだけでなく,自分たちに合ったものづくりの環境を探求し,生き生きとした仕事を具現化している人間中心のデザインの実践者たちを紹介していく。彼/彼女らのものづくりの姿勢を通じて,本来「デザイン思考」で提唱されていた考え方について再考し,よりよいかたちに更新していくためのヒントを探していきたい。
[インタビュー]
CEKAI バリアブルな組織と拡張するクリエイション
聞き手:アイデア編集部
構成:高橋創一
[寄稿]
デザインの新時代
文:ポール・ベネット(IDEO)
[寄稿]
クリエイティブの仲介役:ブランドと代理店の間
文:ニコラス・ベル(AUFI)
[連載]
CRITIQUE&CONTEXT 批評とコンテクスト
第3回:批評で何を評価するのか?
文・デザイン:イエン・ライナム
翻訳:山本真実
グラフィックデザイナー/教育者のイエン・ライナムが,デザイン教育における批評の在り方を考察していく連載記事。第3回目となる今回は,デザイン教育の現場での著者の実体験をもとに,批評について掘り下げていく。
[連載]
MIRRORS 鏡の国のグラフィックデザイン
Vol. 4:Independent Practice
構成・文・翻訳:後藤哲也
デザイン:Sulki & Min
日本と似ているようで似ていない,韓国のデザイン業界をとりまく状況を伝える連載の第4回。韓国のデザイン業界では,日本に比べて広告代理店の影響力は低く,大学卒業後に自らのスタジオを立ち上げるデザイナーも少なくない。個人や小規模スタジオが大小さまざまなプロジェクトに関わり,ユニークなデザインを展開している。そんなインディペンデントな活動を行う新世代のデザイナーたちの中からShin ShinとORDINARY PEOPLE,ふたつのスタジオを紹介する。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 第389回企画展
「Yui Takada with ori.studio CHAOTIC ORDER 髙田唯 混沌とした秩序」
信頼という軸がつないだコラボレーション
座談会:髙田唯× ori.studio ×西尾健史
聞き手:アイデア編集部 通訳:古屋言子 デザイン:ori.studio
会場写真:藤塚光政 写真データ提供・協力:ギンザ・グラフィック・ギャラリー
2022年7月11日から8月25日までギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された,グラフィックデザイナー髙田唯の個展「Yui Takada with ori.studio CHAOTIC ORDER 髙田唯 混沌とした秩序」では,グラフィックデザイン,教育,音楽レーベルの運営など,常に多くのものを吸収し,人々とつながり,新たな関係性を生み出してきた髙田の表現を振り返りじっくりと観察できるような空間が,二組のデザイナーとのコラボレーションによりつくり出されていた。本稿ではそんなコラボレーションの過程について,作品集『AXIS』を制作したori.studio,会場の空間デザインを担当した西尾健史を交え,髙田とともに話を聞いた。
「よむかたち」をよむ
永原康史の歩み
文・デザイン:長田年伸
2022年6月10日から25日まで,多摩美術大学八王子キャンパス内のアートテークギャラリーで開催された「よむかたち デジタルとフィジカルをつなぐメディアデザインの実践」展。2022年をもって同大学情報デザイン学科教授を退くグラフィックデザイナー永原康史の退職記念として開催された展示について,デザイナー/編集者の長田年伸が読み解いた。
タイポグラフィの場をつくる
TDCの変革とアジア圏への展開
インタビュー:クセニャ・サマースキャ
聞き手・翻訳:きむみんよん
デザイン:山田和寛(nipponia)
年次のコンペティションを軸にタイポグラフィとグラフィックデザインの分野に資する環境づくりと教育普及を掲げて活動する国際組織The Type Directors Club(TDC)。創立75周年を迎えて組織の変革を進め,近年ではアジア圏を巻き込んだプロジェクトなど,よりグローバルな活動を展開している。その変革の一環として新設されたマネージングディレクターの職に就くクセニャ・サマースキャ(Ksenya Samarskaya)に,TDCのヴィジョンとアジア圏の動向について聞いた。
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