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特集:ポスト・ポップ・グラフィックス
太公良,大原大次郎,サダヒロカズノリ,横山裕一,我喜屋位瑳務,トモエ/イラストレーターズ Flat & Bold:JUN OSON,Shu-Thang Grafix,田中英樹,清水裕子,中村佑介/フローティング・ドローイングス:ポストポッパーズ[藤城嘘,リリカルロリカル,穏やか,梅ラボ] ,えさしか,あやの,スズコ,MYNA,ニシムラマホ/写真集『東京Y字路』刊行インタビュー横尾忠則 Y字待ち 聞き手:立花文穂/デザインを言葉 に 言葉をデザインに インタビュー:スティーブン・ヘラー/〈特別収録〉akatoki 創刊準備号「中垣信夫インタビュー」 企画編集・デザイン:岩 田安代,大野あかり,川本要,戸塚泰雄
太公良のヴィジュアルワークス
グラフィック的アプローチを空間のすみずみまにまで拡張し,国内・海外を問わず活動を繰り広げているヴィジュアル・クリエイター/アーティスト,太公良(タコラふとりきみよし)。古典的なグラフィックデザインやイラストレーションがマーケットのなかで技法的に消費されがちな現代のなか,生活者と作り手両者の目線からグラフィックによるコミュニケーションの復権を企てている。
MOZINE IDEA EDITION 大原大次郎
SAKEROCKやASA-CHANGはじめミュージシャン関連のアートワークや映像を手掛け,その独自の手作り感覚やディレクションが注目を集める一 方,コミュニケーション回路のひとつとしての展覧会やZINE作りを精力的におこなっている新進デザイナー,大原大次郎。その等身大の考え方。
グラフィックの森へ サダヒロカズノリ
90年代初頭に数々の賞を獲得した鮮烈なデビュー以来,造形芸術やデザインのフィールドをまたいで活動を行ってきたサダヒロカズノリ。アートやデザインなどの専門性の枠を越えた地点から出発したサダヒロが展開する,有機的なグラフィック作品。
横山裕一 日常に潜む奇天烈ワールド
現代美術に憧れながら漫画の世界で新境地を開拓。時間の経過と人の動きが淡々と,かつリズミカルに描写されたページを目で追っていくと,臨場感あふれる不思議な世界に引き込まれていく。
我喜屋位瑳務 ツイステッド・ポップ
ジャック・カービー的アメコミ・イメージと,B級ホラー映画,パルプマガジン的な猥雑さに日本の漫画・アニメ・ゲームカルチャーのグラフィック性が混ざり 合い,昭和30年代の貸本劇画にも似た奇妙な無国籍感とねじれたポップを放ちはじめる。第1回「1_WALL」展でグランプリを受賞した気鋭のイラスト レーターのイメージ世界。
トモエ Critical Typographic-Hits
みずからが慣れ親しんだ90年代の男の子カルチャーと,欧文のフォルムや音にときめかざるをえない戦後日本の精神性を率直に見つめ,「いまここの日常」から生み出されてくるトモエのタイポグラフィック・アート
イラストレーターズ Flat & Bold
イラストレーションの領域は,90年後半以降コンピューターの登場ととともに爆発的な領域拡大を遂げ,職人,タブロー主義から趣味の手すさびまで無段階の スペクトラムのなかで日々厖大な作品が生み出されている,その文脈も古典的なイラストレーション由来の者から漫画・アニメ由来のものまで限りない。
それらの描き手や領域のすべてを「イラストレーション」という一語に担わせるのは限界かもしれないが,この圧倒的な現実のなかでは「描かれた画」という一点において等価であり,絶え間ない相互参照が次の作品へとつながっている。
フラットランドが大賑わいの反面,いわゆるリアルワールドにイラストレーションはメディアの転換期のなかでタフな状況を迎えていたようにみえる。しか し,そんななかメディアへの視座と自らのスタンスを明確に保ちながら,コマーシャルのフィールドでしなやかに力強く活躍する若いイラストレーターたちがい る。現代の多様なメディア環境のなかでさまざまな文化や表現に積極的に向き合いながら,それぞれの魅力的なアプローチで視る人との豊かな対話の場をつくり 出している。
JUN OSON
80年代ポップイラストレーション,90年代のグラフィック,00年代のネットカルチャーの流れの交点から独特のポッ プさを展開する新進気鋭のイラストレーター。
Shu-Thang Grafix
「R25」や「BRUTUS」といった雑誌をはじめとするさまざまな媒体で活躍するイラストレーター浦野周平。クールな線画を 独特のユーモアで脱臼させた作品は,同時代日本のイラストレーションの在処を端的に示している。
田中英樹
設計図やダイアグラムのようなグラフィックで構築される不思議な世界を繰り広げ,90年代から現代にいたるイラストレーション潮流の一線で活躍してきたスタンスを聞く。
清水裕子
イラストレーションの本場であるニューヨークで,イラストレーターとして活躍する清水裕子。現代のグローバリズムとオリエンタリズムが混交する地に身を置きながら,独自のアイデアをダイナミックに描き,活動の場を世界へと広げている。
中村佑介
ミュージシャンのCDジャケットや書籍の装画を数多く手掛け,09年夏に刊行した作品集『Blue』で,世代を問わず新たなファンを獲得している中村佑介。新鮮さと懐かしさを併せ持つ彼のイラストには,明快な思想と緻密な作業に裏打ちされた世界観がある。
フローティング・ドローイングス
ポストポッパーズ[藤城嘘,リリカルロリカル,穏やか,梅ラボ]
2008年3月、藤城嘘が立ち上げたアートグループ企画。インターネットの繋がりを現実に召喚する展示を多数展開。参加メンバーは毎回流動的で、今回紹介した作家は過去の参加者から編集部が選出した。
えさしか
2008年からウェブで音楽などを公開。2009年より創作サークル「良識派」にて活動。ここではコラージュやドローイングのテイストが強く出た作品を中心に選出。
あやの
ブログを中心に活動。どこか不安げな表情や言葉を封じられたような少女のドローイング作品を多く発表。テキストが装飾的に扱われ、キャラとの混成が奇妙な効果を生んでいる。
スズコ
ウェブを中心に活動し、2008年から現在の作風となる。欠損や傷口が特徴的・装飾的に描かれた可愛らしい少女をモチーフに、デジタルとアナログを往来する作品が目立つ。
MYNA
80年代のSFコミックなどの影響から絵を描きはじめる。キャラクターの服飾が徐々に複雑な紋様となって背景との境界を曖昧にし、画面を埋め尽くしていく独特の作風は観る人を圧倒させる。
ニシムラマホ
イメージの連鎖反応を微細に描き留めることで生まれる有機的な世界をテーマに、ボールペンを用いた線画作品を制作。近年はライブドローイング、リクエストドローイングといったパフォーマンス活動も開始。
写真集『東京Y字路』刊行インタビュー「横尾忠則 Y字待ち」聞き手:立花文穂
60年代からグラフィックデザイン界の草分け的存在として活躍し,80年代以降は美術家としての活動をメインに,国内外で精力的に創作活動を行う横尾忠 則。表現方法は油絵,シルクスクリーン,コラージュなど幅広く,独特の作風と色使いで横尾ワールドを展開している。2000年からはY字路をモチーフにし た絵画を描き続け,2009年には自らY字路を撮影した写真を『東京Y字路』にまとめ発表した。Y字路をひとつの舞台に,さまざまな表現に挑む横尾に,世 代を異にしながら,グラフィックデザイナー,アーティストとして活動し,近年は写真による表現も取り入れている立花文穂が,Y字路をはじめ,美術,写真, 印刷に対する思考や創作の源を探った。
スティーブン・ヘラーインタビュー「デザインを言葉に 言葉をデザインに」
30年以上にも渡り,「ニューヨーク・タイムズ」紙のアートディレクターを務め,現在はNYの美術大学 スクール・オブ・ビジュアル・アーツの大学院で,デザイン教育に携わるスティーブン・ヘラー。デザイン関連の著書や編著も数多く,刊行点数は約100冊に も及んでいる。アンダーグラウンドの新聞のアートディレクションを手掛けた17才の頃から始まったという彼のキャリアは,どのような歩みを経て現在に至る のか。いかにしてアメリカのデザインジャーナリズムを牽引してきたのか。イラストレーションやデザインに対する考え方やこれからのデザイナーのあり方な ど,幅広く話を聞いた。
〈特別収録〉akatoki 創刊準備号「中垣信夫インタビュー」
企画編集・デザイン:岩田安代,大野あかり,川本要,戸塚泰雄