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大原大次郎は言葉のただしい意味で今もっとも「活動」しているデザイナーだ。大原の活動はクライアントワークと自主企画の区別なく,グラフィック,イラストレーションやワークショップの領域を越えてつながっていく。それは「問題解決」と「自己表現」の両極に矮小化されてしまったデザインの領域を,根本からとらえなおす道のりでもある。さまざまなヴィジュアルやテキストが多彩な造本・印刷のもとに一体となり,グラフィックデザインのいまを浮かび上がらせる待望のプロジェクト。
企画・構成:大原大次郎,アイデア編集部
デザイン:大原大次郎,宮添浩司,本多伸二
重力を主題としたタイポグラフィのモビールシリーズ〈もじゅうりょく〉
制作:大原大次郎,宮添浩司/タイポグラフィ:平野甲賀/写真・スケーティング:平野太呂
毎号異なる体裁で独自に発行する文字のZINE「mozine」。タイポグラファの平野甲賀と写真家・スケーターの平野太呂親子の対談を収録した第2号の抄録
書籍の題字やロゴデザインなど,手描きをはじめ様々な手法を駆使した描き文字の数々
2015年6月に解散したバンド「SAKEROCK」をはじめとする音楽関連のデザインワークを紹介
制作記:後藤しおり/ 制作記構成:長宗千夏 / 文:大原大次郎
ケータリング・出張料理人として活躍する後藤しおりの制作ノートを収録
イルリメ+蓮沼執太+大原大次郎によるTypogRAPy。ラッパーとタイポグラフィのコラボレーション。シングル「起点 with イルリメ+大原大次郎(TypogRAPy)」がiTunes Storeで先行配信されている。
大原が中学3年生から制作し,数名の同級生たちに配布していた手づくり新聞
近代は直線的な原理によって発展してきた。「ルール(rule)」の原義が「まっすぐな棒」であるように,合理性と経済性によって直線的に支配された現代のあらゆる場面で,曲がったものは周縁に追いやられる。ネットの多様性も直線的で即時的な短絡にとってかわられた。そんな時代にあって,大原大次郎は寄り道や回り道,他人との道連れの連続だ。その軌跡からは,アボリジニの神話的“歌の道(ソングライン)”のように,ひとつの固有な世界が立ち上がる。痩せた自己表現ではなく,他者と相互に開かれた製作(fabrication)の世界。自己と他者,意味と形,原初性と現代性を往還し,プロジェクト同士が連環をなす,その曲がりくねった線にはなにが宿るのか。(序文より)
1978年,神奈川県生まれ。2003年,武蔵野美術大学基礎デザイン学科を卒業後,レタリング,イラストレーション,映像制作,アートディレクションを中心に活動するデザイン事務所「omomma」を設立。タイポグラフィを基軸としながら,ミュージックビデオのディレクションや,広告・パッケージデザイン,出版等に従事するほか,展覧会,ワークショップ,パフォーマンス,フィールドワークを通して,言葉や文字の新たな知覚を探るデザインプロジェクトを積極的に展開する。近年のプロジェクトには,重力を主題としたモビールのタイポグラフィ〈もじゅうりょく〉,スケートボードに彫られた文字を身体的アプローチや環境要因によって変化させていく彫刻シリーズ〈文字に乗る〉,山岳写真と登山図を再構築したグラフィック連作〈稜線〉,音楽家・蓮沼執太とラッパー・イルリメと共に展開するライブパフォーマンス〈TypogRAPy〉などがある。共著に俳句集『ハロー風景』。2014年JAGDA新人賞,東京TDC賞受賞。
第5回 1960年代と1970年代 PartOne―オキュパイド・ジャパン以後
デザイン:宮崎希沙
戦後、驚異的な高度経済成長を遂げた日本で,ラジオやテレビを通じて拡大していくマスコミの影響力は,人々の暮らしを良くも悪くも変えていった。小さなメディアはどのように必要とされ,どのような人々によって世に送り出されていたのか。「ミニコミ」が生まれた時代を探る。
文・構成:後藤哲也
共同編集:ジェイヴィン・モ
デザイン:スルキ&ミン
香港,台北,北京,ソウル,バンコク,ホーチミンと,アジアの各都市のデザイナーをめぐってきた本連載。最終回は東南アジアの都市国家シンガポール。英語を公用語とするグローバル先進国の地で,デザインはどのような状況にあるのか?
ゲスト:山本貴光,寄藤文平
デザイン:中垣デザイン事務所
『文体の科学』で文の姿かたちを観察し解読した山本貴光。『絵と言葉の一研究』で絵と言葉による「わかりやすさ」を追求した寄藤文平。メディアのデジタル化が進む現代において,両者の興味はコミュニケーションの新たな形へと向かう。「文体のデザインのはざま」に見える未来とは? デザインはリベラルアートへと昇華されうるのか? 大反響を呼んだ伝説のシンポジウムが誌上で再演される。
グラフィックを纏う新プロジェクトの躍動
デザイン:川添英昭
ファッションブランド「 ISSEY MIYAKE」による,日本を代表するデザイナー・田中一光の作品をモチーフにした新プロジェクトが登場した。グラフィックと衣服を融合する取り組みについて,三宅一生と研究・開発を続けてきたデザインチームに聞く。
展示作家:平野甲賀,鳥海修,ヨコカク,向進舎印刷
構成:向井裕一
協力:小豆島町
香川県小豆島に移住した平野甲賀が,小豆島町の旧醤油会館で開催した「文字に文字展」。「小豆島の歴史や文化を文字を通じて感じてもらおう」という本展を誌上再現。
――都市表象へのタイポグラフィ的アプローチ
デザイン:川添英昭
撮影:キム・ジンソル
韓国ソウル市内で11月11日から12月27日まで開催されているグラフィクデザインの祭典「タイポジャンチ」。第4回展の概要を速報的にレポート。
Reviews & Information
新作映画情報
書評
インフォメーション&新刊紹介
新書体
出演者:菊地敦己,室賀清徳,水野祐
企画・司会:山口博之(BACH)
デザイン:長田年伸
2020年東京オリンピックのエンブレム問題について,より発展的な議論をかわすためのトークイベントが2015年10月20日に開催された。権利によってデザインの何が保護されるのか。デザインにおける「オリジナリティ」とはいかに考えるべきなのか。エンブレム問題を通じて「デザイン」とは何かを問い直す試み。
P.2(目次)
153〈連載〉ばるぼら×野中モモ:日本のZINEについて知ってることすべて
第5回 1960年代と1970年代 PartOne―オキュパイド・ジャパン以後
誤)1860年代と1970年代 正)1960年代と1970年代
P.2,3
193 IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE グラフィックを纏う新プロジェクトの躍動
誤)IKKO TANAKA ISSAY MIYAKE 正)IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE