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特集:河野鷹思 本の仕事,雑誌の仕事/構成・文:川畑直道/[回想インタビュー集]河野鷹思という才能 仲條正義,細谷巖,杉浦範茂,松山道明/特別企画:服部一成「視 覚伝達」/特集:フィーア・フュンフの仕事-新しさ,そして自由を求めて/建築とグラフィックデザインの臨界-「フォームズ・オブ・インクワイアリィ」展 の試み表紙デザイン:服部一成
特別企画:服部一成「視覚伝達」
デザイン:服部一成10月19日から11月3日にかけて,表参道のGallery5610にて服部一成の新作個展「視覚伝達」が開催された。「グラフィックデザイン」の本質的な可能性にあらためて向き合ったその作品は,現代のデザインを巡る状況に一石を投じる。B全オフセットポスターで展開されていた本展を誌上に独自に再構成する特別企画。
特集:河野鷹思 本の仕事,雑誌の仕事
構成・文:川畑直道
“この特集は,1930年代から半世紀にわたって日本のグラフィック・デザイン界をリードした河野鷹思(1906-1999)の,ブックデザイン,装幀, 雑誌の表紙など,書物にまつわる仕事を紹介するものだが,彼はそれだけを生業にしたデザイナーではない。むしろ,小津安二郎の映画『生まれてはみたけれど』(1932 年)の美術監督や,日本万国博覧会(大阪,1970年)日本館の展示デザインなど,グラフィックという枠を超えた多彩な活動で知られる人物だ。それゆえ, 彼の書物にまつわる仕事は,他の分野に比べれば少しばかり軽んじられてきたといってもいい。 では,いまなぜそれを取り上げるのか……ひとことで いえば現代性(モダニティ)と地域性(ローカリティ)への関心からである。” (序文より)日本のグラフィックデザインのパイオニア,河野鷹思のブックデ ザインを貴重な図版と証言を交え80ページにわたって特集。国際化時代の今こそあらためて,そのデザインは多くを語りかける。
[回想インタビュー集]河野鷹思という才能
仲條正義,細谷巖,杉浦範茂,松山道明
特集:フィーア・フュンフの仕事
新しさ,そして自由を求めて
Vier5(フィーア・フュンフ)は,南ドイツ出身のアキム・レイカートとマル コ・ファイドラーの2人が結成したデザイン・ユニットだ。フランスのパリを拠点に現代美術やファッションの領域を中心に活躍しているVier5は,自身が 取材、撮影,編集,デザインまで全てを手がけて発行しているモード雑誌「FairyTale」を通じ,世界的に広く知られるようになった。また2007年 にドイツのカッセルで開催されたアートの国際展「ドクメンタ12」において,斬新な会場案内のシステムを担当したことでも記憶に新しい。「新しく進歩的なイメージを生み出す」というデザインの可能性を追求するうえで,「今日的なフォント」を用いることを重視するVier5の仕事は,今日における「新しさ」とは何か,という問いを投げかけている。そこで本特集では,前に進み続けることへの「自由」を求め,「新 しさ」へと立ち向かうVier5の現在進行形の姿を,彼ら自身のデザイン・編集により40ページにわたって特集。また「Fairy Tale」誌のアイデア誌上における特別版として「ドクメンタ・スペシャル」号を再編集して掲載するとともに,Vier5へのロングインタビューも収録す る。
建築とグラフィックデザインの臨界
フォームズ・オブ・インクワイアリィ」展の試み
取材協力:ザーク・カイズ
ロンドンの建築学校AA スクールにて開催された「フォームズ・オブ・インクワイアリィ」展は,現代のグラフィックデザイナーたちの実践を通して建築を捉えなおす試みだ。展示企画 に参加した19 組のデザイナーたちは,建築にまつわる主題を「インクワイアリィ(問いかけ,探求)」 という形式で取り上げ,それに基づいて新たにA0 サイズのポスターの制作を行った。また,キュレーターを務めたデザイナーのザーク・カイズは本展で,グラフィクデザインという専門領域自体を再編成するよ うな,デザイナーたちの新たな役割や活動のモデルを示そうと試みている。 そこで本記事では,展示に際して制作された各デザイナーによるポスター作品と合 わせて,展覧会のコンセプトや全体的な議論の枠組みも重点的に紹介することで,グラフィックデザイナーたちの直面する2つの境界-建築という領域との交わ りと,グラフィックデザインという分野自体の再編成—-に焦点をあてる。なお詳細な情報は,下記のウェブサイトを参照。http://www.formsofinquiry.com